ドイツ政府のウクライナ難民受け入れは移民政策の「ダブルスタンダード」か

ドイツ政府のウクライナ難民受け入れは移民政策の「ダブルスタンダード」か

増え続けるウクライナからの戦争難民

2022年2月24日にロシア軍がウクライナに侵攻して以後、多くのウクライナ人が祖国を追われ、隣国に保護を求めている。その数はすでに430万人を超えているという(4月10日現在)。ドイツでも4月6日までに31万人のウクライナ人が戦争難民として登録されたという。ウクライナから逃れてきた人達の84%までが女性で、そのうちの58%が子供を連れているという。彼らはシェンゲン条約内のEU加盟国であれば、ビザなしで自由に移動ができるため、ドイツ国内に流入している難民の数はさらに多いはずである。今後もこの数はさらに増えるだろう。

ウクライナからの難民に対する経済支援

4月10日付『東洋新聞オンライン』上に掲載された記事「ウクライナ難民受け入れフランス移民政策の混沌」を読んだ。詳しくは記事に譲るが、仏政府のウクライナ難民に対する異例の厚遇と、その他の難民に対する取り扱いとの差について疑問を呈したものであった。

現在、ドイツでも同じことが起こっている。連邦政府は4月7日、ウクライナからの難民に対する経済的支援について、ドイツ在留を許可された難民と同程度とすることを発表した。これはドイツの生活保護制度にあたる「失業給付II」受給者と同じ扱いを受けるということであり、在留の審査中にある者よりも高い給付、より良い医療を受けられることを意味する。

調べてみると、失業給付IIの給付額は月額1人世帯で446,00ユーロである。対して、入国後、在留、あるいは退去決定までの間に庇護申請者が受ける「基本給付」の内容は食事、宿泊、暖房、衣服、健康維持について最小限の給付を行うというもので、収容施設内では全て現物で支給される(庇護申請者給付法第3条)。収容施設でない場合は現金での給付となるが、この支給額は1人世帯で月に約220ユーロである。

今回の政府決定は、通常、ドイツに庇護申請した者が受けるべき審議をすっ飛ばして、無条件に次のステップを約束したというわけだ。

この政府の決定については世論としても批判がある。4月8日のドイツ国営放送ZDF局のニュース「ZDF Morgenmagazin」にはベルリン市長のフランチスカ・ギファイ氏がライブ出演し、この政府のダブルスタンダードとも言える決定について問われていた。市長は「ウクライナ難民には、出国まで普通に就労していた方が多い。一刻も早く社会的な生活を送れるようになりたいとの意見が大勢を占めた」と述べたが、「なぜ入国後すぐに高い給付を保障されるグループとそうでないグループがあるのか、不公平ではないのか」と問うインタビューアーへの回答にはなっていなかった。

現行の移民政策とのギャップ

そもそもドイツは近年、移民の受け入れプロセスを迅速化し、情状酌量の余地のないシステマティックな制度を作り上げていたのだ。これは2015年、2016年に100万人を超える難民を受け入れる中で確立されてきたもので、入国から、事情聴取、在留・退去決定までの一連の手続きを6ヶ月以内に完了するようにしている。審査中は上記の現物支給での生活が基本となり、移動も制限される(移動の制限については2015年12月31日ケルン市の年越しで1,000人以上の庇護申請者らが街中で女性を襲撃する事件が起こったことを踏まえている)。在留不可の決定が出ると、給付が打ち切られ、確実に帰国の途に着かされる。過去には病気などを理由に退去が遅れることもあったが、これも現在は命に関わるようなケースを除いては延長が認められない。

さらに一般的に自国、あるいは他国による迫害の恐れがなく、領土内での保護が十分見込める国を「安全な出身国」とし、この適応を広げていた。その中でアルバニア、コソボ、モンテネグロの3国が2015年以降、安全な出身国との指定を受けている。在留のための審査こそ行われるが、安全な出身国からの在留希望者は、出身国の安全性を覆すような各個の迫害の危険を証明する必要があり、通常、ほぼ在留は認められない。

このような受け入れの厳格化の一方で、在留見込みがある者については許可が下りる前から、労働市場への統合に向けた支援が開始される。2020年からは新しい法律「技能者に係る移民法」も発効した。ドイツの移民政策は、経済の需要に応じた労働移民や高度人材の受入れ促進という、選択制を採用したものにさらに進化しつつある。

このような流れの中で、今回の政府の支援策には合理的な説明が求められている。ドイツの長期的な労働力の補填として期待しているのであれば、これまでの政策の延長上にあるものとしてまだ説明もつく。しかしながら、何か感情的なものが背景にあるのなら、他の難民に対しては不公平、またフランスでも言われているように、人種差別的な決定と批判されてもしょうがないだろう。