べルリンで日本人がヘアドネーションをした話

今回は少々個人的な話になる。 2020年の最初のロックダウンを迎えた時、ドイツでは一時、理容院・美容院も営業停止になった。まだコロナウイルスに対する知識も情報も今ほどにはなく、ワクチンも開発されていなかった頃の話だ。とにかく、人的な接触を極限にまで減らし家に篭ること、これ以外に対策らしい対策はなかった。 当時の私の髪型はショートボブというもので、耳の下のラインでぎりぎり揃うぐらいの長さだった。後ろは若干刈り上げ気味だったかもしれない。短いヘアスタイルをかれこれ10年以上も続けていて、3ヶ月に一度はベルリンの日本人が経営する美容院で施術を受けていた。それが、しばらくできなくなってしまった。その後、ロックダウンも終わり美容院も再び開業したが、マスクと消毒、換気などの徹底もしながらの施術と聞いて、なんとなく訪問する機会を逸していた。 仕事は3月頭から何も入っていない。日本からドイツへの渡航者が途絶え、通訳やアテンド業務は当然ながらゼロになった。いつこのような状態から脱却できるのか、全く目処も立たない。ドイツ政府が緊急対策としてすぐに補助金を導入してくれたのは心強かった。仕事がなくなったのは誰のせいでもないし、同じ境遇にあるのは私だけじゃない。そう思ってはみても、自分でメンタルをコントロールしていかなければ、不安に飲まれそうになる瞬間もある。そこで毎日、1万歩を歩くことを自分に課し、普段できないことをやってみようと考えた。どうせなら良いことを。…

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ドイツインフレの現状

ここのところなんでも高くなっていてびっくりする。先日は出張の移動中にパクついたファーストフードの値段に驚いた。ハンバーガー単品で頼んだだけなのに6.59ユーロもした。いや、確かにちょっとデラックスな種類(Big Tasty Baconというらしい)を選んでしまったことは認める。しかし、それにしたってハンバーガー一つに900円とは何事だ。各国の物価指標によく使われるビッグマックはセット価格で9.29ユーロ(1,260円)もする。これはもう日々のランチに利用できないレベルではないか。2022年7月インフレ率: 前年同月比…

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ドイツ半導体市場動向

2021年春、筆者はドイツのとある自動車部品工場で、日本企業の立ち上げプロジェクトに張り付いていた。この工場は自動車向けの加工部品を生産しているメーカーで、最大のお客様はダイムラーである。ある日、通称ダイムラーホールの加工ラインが一斉に止まった。

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ドイツ政府のウクライナ難民受け入れは移民政策の「ダブルスタンダード」か

2022年2月24日にロシア軍がウクライナに侵攻して以後、多くのウクライナ人が祖国を追われ、隣国に保護を求めている。その数はすでに430万人を超えているという(4月10日現在)。ドイツでも4月6日までに31万人のウクライナ人が戦争難民として登録されたという。ウクライナから逃れてきた人達の84%までが女性で、そのうちの58%が子供を連れているという。

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2022年3月ドイツエネルギー政策の動き

気候中立目標を2045年まで前倒ししたドイツのエネルギー政策が、ここにきて大きく足元をすくわれている。原子力、石炭火力から再エネ100%への移行期にそのギャップを埋めるはずであったガス資源の主要な供給元がロシアなのだ。ドイツは1日でも早く、露ガスからの脱却を図らなければならない。この3月は、1ヶ月で半世紀分のエネルギー施策が行われたのではないかと思われるほどの激動ぶりであった。既に日本で報道されている内容も多いが、この記事ではダイジェストでこの1ヶ月のドイツエネルギー動向を振り返りたい。  ガス購入代と軍備増強とドイツの露ガスへの依存度が50%を超えていると言うことは、報道でご存知の方もいるかもしれない。昨年は600億立方メートルの天然ガスがロシアからバルト海パイプライン「ノルドストリーム1」でドイツに輸送された。ドイツは2014年以降、ガス、石炭、石油のためにロシアに約1,700億ユーロを支払っているという。2014年はロシアがウクライナのクリミア半島を併合した年だ。野党である左党のディートマー・バルチュ党首は「全く不合理だ。先に1,700億ユーロをロシアに送金し、その支払い先から自らを守るために1,000億円ユーロを軍備に回そうとしている」と政府を批判した。 褐炭の復活はあり、原子力はなし露ガスへの依存から早急に脱却するため、気候中立への道は一旦棚上げにしてでも、ガスに依存しないあらゆるエネルギー供給の方法を検討しなければならない。まず検討されたのは原子力である。原子力発電所は2022年までに完全に系統から外されることになっており、現在、最後の3基が稼働している。しかしこれらを延長して稼働するという可能性は早々に排除された。福島原子力発電所の事故からわずか3ヶ月で原子力撤退の決定をされた事業者側の態度が冷たかったこともあるが、ベルリン工科大が行ったコスト試算でも、新たな認可、人員確保、安全インフラの再構築が数年程度の稼働ではペイしないと分かったためだ。石炭・褐炭発電はどうか。こちらは遅くとも2038年までのフェーズアウトが決まっている。さらに現政権はこのフェーズアウト完了を8年前倒しして2030年とする見直し案に合意している。ここ数年は石炭火力に早々に見切りをつけ、償却も終わっていない発電所が閉鎖することが相次いでいた。原子力とは対照的に、これらの電源は大いに再活用する可能性がある。「安全リザーブ」と呼ばれ、本来なら2023年には解体に入る予定の褐炭発電所もスタンバイを続ける可能性が出てきた。問題は気候に悪影響を与えることだ。 ドイツ初のLNGターミナル並行してドイツが行ったのはLNGターミナルの確保である。これまでガスは道管で陸送されるものと信じて疑わなかったドイツには未だLNGターミナルがない。これは長期的には気候中立に逆行する投資であるし、建設には何年もかかる。しかし世の中には便利なものがあるらしい。浮体式LNGターミナル(Floating Storage and Regasification…

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ドイツベンチャーキャピタル市場

ドイツのスタートアップは2019年、VCから57億ドルという記録的な投資を受けた。これまで最高とされた2018年の投資額からさらに49%増加した。【図1: ドイツのVCによる投資額】2020年時において、ドイツはアメリカ、中国、英国に次ぐ、第4位のVC市場である。世界最大のVC市場である米国は1,000億ドル以上の規模があり、中国も500億ドル以上の市場である。さらに世界第3位、欧州ではトップの英国は112億ドルの市場規模を持つ。これらの国に比べると57億のドイツのVC市場はまだまだ小さいと言える(日本はカナダ、フランスに次ぐ7位)。しかし市場の伸び率ということで見るとドイツは活況にあると言える。米国への投資額は前年から7%の増加にとどまっており、また中国は前年から55%も減少している。前年比で49%増のドイツのVC市場は小さいながらも成長目まぐるしい、ということが言えるだろう。投資額全体が増大している一方、投資件数は逆に減少している。2018年、ドイツでは862件の投資案件が確認されているが、2019年には785件と9%減少している。この傾向はドイツだけではなく欧州全体について当てはまり、英国で16%、フランスで35%、スウェーデンでも18%、それぞれ投資件数が減少している。【図2: 各国のVC市場規模】近年ドイツの投資家らはより海外に目を向けるようになっている。2018年、ドイツの投資家は3.6億ドルを海外スタートアップに出資している。同時期の国内への投資額は2.7億ドルであり、海外への投資が国内を上回っている。海外のスタートアップがドイツの投資家を頼る理由として、投資家から現地の市場動向についてアドバイスを受けたい、というものがある。特に特定の分野に絞って投資する投資家の場合はこの傾向が強い。シリコンバレーのスタートアップらも欧州進出に関心を寄せる。しかしこのことはドイツ国内の企業にリスクキャピタルが降りてこないことを意味している。ドイツではシード・スタートアップフェーズ向けの少額プログラムは公的VCにより比較的多く用意されているが、成長フェーズ向けの支援策が少ないという構造的問題を抱える。スタートアップ企業への投資のうち42%までが15万ユーロ未満の投資であり、1,500万ユーロ以上を一社に投資するファンドは皆無である。1億ユーロ以上の投資においては完全にアメリカ、中国のVCに頼っている状況である。成長フェーズへの投資は毎年5億から6億ユーロ不足している。取引額の平均が小さいことからドイツスタートアップは実力よりも低く企業価値を見積られる傾向もあるという。さらには公的基金主導の弊害も指摘されている。公的基金による投資額は毎年上限が決まっているため、停滞のないスケーリングや爆発的成長が妨げられる可能性がある。この状況を打開すべくドイツ政府は2020年に「スタートアップ未来基金 (Zukunftsfonds)」を創設し、2021年度予算より10年間で100億ユーロ分をスタートアップ投資に配分することを決めた。この基金では特に成長フェーズにあるスタートアップが対象となる。White…

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Facts & Figuresドイツ風力発電

2020年1年間にインストールされた風力発電機は陸上、洋上合わせて1341MWにとどまり、2018年以降連続で2000MWを下回る結果となった。ドイツの風力発電機は2017年の5334MWを最高に2018年は2402MW、2019年は944MWと低迷している。特に陸上風力発電でエミッション(騒音など)による住民反対から建設認可が降りないことが原因している。2020年からは再エネ法による助成が満了する風力発電機が出るため、これらが停止すれば、容量の増大が見込めないばかりか大幅な減少も免れない。

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EUタクソノミー規制

独エネルギー業界、EUタクソノミー規制について嘆願書を提出EUでは現在、タクソノミー規制のサスティナビリティー概念を規定する技術的項目について調整が進められている。特にガス火力発電の取り扱いがエネルギー業界とEUとの間での争点となっている。業界側は石炭発電を代替するガス発電について諸条件を緩和するよう求めている。先ごろ出されたEUの改正案では、石炭発電の代替として稼働するコジェネ発電は「サスティナブル」であると認定された。業界側はこれを歓迎しつつも、この適応がEU加盟国全体ではなく一部の地域に限定されていることに意義を申し立てている。また熱抽出を実際に行わなくとも、コジェネサイクルを技術的に備えている発電所であれば、サスティナブルであるとすることを求めている。さらに系統安定のためのガス火力発電についても、サスティナブルと考えるべきとの点も挙げられている。さらにガスインフラについて「水素対応の有無(hydrogen readiness)」も評価項目に加えるべきとしている。ドイツ30社以上の民間企業とエネルギー業界の連合会が、EUタクソノミー規制のサスティナビリティ評価に関する嘆願書をまとめ、メルケル首相宛に提出した。EUタクソノミー規制はEUのグリーンディール政策の根幹をなすものである。将来的に金融投資家はそのポートフォリオについて、タクソノミーに基づきサスティナビリティーの報告をしなければならないだけでなく、出資先の事業についても同様に査定することになる。従ってどのようなエネルギーがサスティナブルと定義されるかはエネルギー業界にとって事業性を分ける非常に重要な問題である。またガス発電のCO2排出目標についても業界側は反対している。ガス火力発電では270gCO2/kWhの排出上限がサスティナブルかどうかの閾値になっているが、これをクリアしているガス発電所はない。これは最新技術を持ってようやく達成できるレベルであり、現実的にクリアするのは難しい。業界側はこうした変更を必須と考えているが、実際のところ議論の時間はほとんどない。4月21日にEU内での法的な手続きがクローズすると、その後、欧州議会、あるいは欧州理事会が覆さない限り法案は通過してしまう。嘆願書にはエネルギー大手のEnBW、Eon、Uniper、VNG、Equinor、Wintershall Dea、主要な公営事業社(Stadtwerke)、発電所メーカー、ドイツ連邦エネルギー・水道事業連盟、ドイツ産業連合などが署名している。出典: https://www.energate-messenger.de/news/210945/eu-taxonomie-nicht-nur-die-klassenbesten-belohnen…

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